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第二十七話 黒い衣の記憶

last update تاريخ النشر: 2026-09-04 09:54:18

 景黎様の手が、文を握ったまま止まっていた。

『思い出せ、景黎。皇后を最後に見た夜、薬湯の前に部屋にいたのは玉蘭だけではない』

『鼠に聞け。床に落ちていた黒い衣の端を』

『真犯人は、毒を入れた手だけではない。毒を止められたのに止めなかった手だ』

 景蘭様の字は、美しかった。

 腹が立つほど。

 人を傷つけるための文なのに、筆の運びだけは整っている。

 景黎様は、その美しい毒を黙って見つめていた。

 茶庫の中は冷えている。

 青い紐、赤い紐、黒い紐。

 棚に並んだ茶包みが、まるで罪人の首札のように見えた。

 黒紐。

 還子茶。

 血を眠らせ、記憶を曇らせ、母の声を近くする。

 多量にて従順、少量にて夢見。

 景黎様は、過去にそれを一口だけ飲んでいた。
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